AIリスキリングの助成金|従業員のAI研修で最大75%戻る制度と、申請の流れ・計算例

公開:2026年10月20日更新:2026年10月20日

運営:INTEGRATE DESIGN(自動車部品の設計受託を行う個人事業。経営と設計の仕事で、生成AI(Claude・ChatGPTなど)を日常的に使っています)|検証方法

会議室で社員に研修の予定を説明する50代の経営者のイラスト

「AI研修は助成金で7割以上戻る」という案内を、よく見かけるようになりました。たしかに国の助成金はあります。ただし、申請できるのは会社(事業主)で、手続きの順番を一つ間違えると1円も出ません。

この記事では、従業員にAI研修を受けさせたい中小企業・小さな会社の経営者向けに、厚生労働省の「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)」を整理します。受講料ごとに「実際にいくら戻るか」も計算しました。内容は2026年10月20日に厚生労働省の公式資料(令和8年8月3日版のパンフレット・支給要領)で確認したものです。

まず整理:「助成金」と「補助金・給付金」はここが違う

似た言葉ですが、AI研修の分野では誰がもらうかで分かれます。

呼び方 主な制度 もらう人 向いている人
助成金 厚労省「人材開発支援助成金」 会社(事業主) 従業員にAI研修を受けさせたい経営者
補助金 経産省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」 個人(スクール経由) 転職をめざす会社員
給付金 厚労省「教育訓練給付」 個人 雇用保険に入っている会社員など

自分のスキルアップのために個人で受講したい人は、この記事ではなく生成AIスクールの補助金・給付金の記事を見てください。

事業展開等リスキリング支援コースとは

新しい事業の立ち上げや、社内のDX化などにあわせて、従業員に新しい知識・技能を身につけさせる研修を会社が行ったときに、研修費と研修中の賃金の一部を助成する制度です。

対象になる会社・人

つまり、従業員を雇っていない一人の個人事業主や、一人社長の会社は対象外です。逆に、個人事業主でも雇用保険に入っている従業員がいれば、その従業員の研修は対象になりえます。

対象になる研修の条件

  1. 10時間以上であること(eラーニング・通信制は、標準学習時間10時間以上または標準学習期間1か月以上)
  2. OFF-JT(通常の業務と区別して行う研修)であること
  3. 職務に関連し、次のどれかに当てはまること
    • 新しい事業を始めるために、新しい分野の知識・技能を身につける
    • 社内のデジタル化・DXや、グリーン・カーボンニュートラル化に関わる業務のための知識・技能を身につける
    • 人事・人材育成の計画に沿って、3年以内に担当する予定の別の職務に必要な知識・技能を身につける

「業務でChatGPTを使えるようにする」「AIで社内の事務を効率化する」といったAI研修は、2つ目のDX化に当てはまるかを考えるのが基本です。ただし、当てはまるかどうかは計画の中身で判断されます。研修の名前に「AI」とあれば通る、というものではありません。

助成率と上限(令和8年度)

項目 中小企業 大企業
経費助成(研修費) 75% 60%
賃金助成(1人1時間あたり) 1,000円 500円
設備投資加算(要件あり) 機器などの導入費用の50% なし

経費助成には、受講者1人あたりの上限があります。

研修の時間 中小企業 大企業
10時間以上100時間未満 30万円 20万円
100時間以上200時間未満 40万円 25万円
200時間以上 50万円 30万円
eラーニング・通信制 15万円 10万円
定額制サービス(月額の受け放題など) 1人1か月2万円 1人1か月2万円

そのほかの主なルールです。

受講料別:実際にいくら戻るか(中小企業の場合)

経費助成と賃金助成を分けて計算しました。賃金助成は受講料の割引ではなく、研修中も払っている給料の一部が戻るものです。受講料の実質負担は「受講料−経費助成」で見てください。

ケース 経費助成 賃金助成 合計 受講料の実質負担
ライブ型オンライン講座 20万円・30時間・1人 15万円 3万円 18万円 5万円
同じ講座を3人で受講(計60万円) 45万円 9万円 54万円 15万円
通学型 50万円・60時間・1人 30万円(上限) 6万円 36万円 20万円
通学型 60万円・120時間・1人 40万円(上限) 12万円 52万円 20万円
eラーニング 30万円・1人 15万円(上限) なし 15万円 15万円
定額制サービス 月1万円×6か月・1人 4.5万円 なし 4.5万円 1.5万円

※ 計算はすべて、要件を満たし全額が支給された場合の目安です。賃金助成は、所定労働時間内に受講した時間が対象です。ライブ型オンライン講座は「同時双方向型の通信訓練」として、通学型と同じ扱いになります。

申請の流れ

ステップ やること 期限
0 準備 職業能力開発推進者を選ぶ。事業内職業能力開発計画をつくり、従業員に知らせる 計画届を出す日まで
1 計画届 職業訓練実施計画届・事業展開等実施計画・対象労働者一覧・カリキュラムなどを管轄の労働局へ提出 研修開始日の6か月前から1か月前まで
2 研修 計画どおりに研修を行う。研修費を全額支払う 通学・ライブ型は受講時間の8割以上の出席が必要
3 支給申請 支給申請書・OFF-JT実施状況報告書・賃金台帳や出勤簿の写し・研修費の振込記録などを提出 研修終了日の翌日から2か月以内

計画届の期限は、たとえば研修開始日が7月1日なら「1月1日から6月1日まで」です。1日でも過ぎると対象外になります。定額制サービスの場合は、契約期間の初日の6か月前から1か月前までです。

申請は労働局の窓口のほか、厚労省の「雇用関係助成金ポータル」から電子申請もできます。

注意点

1. 期限つきの制度です

このコースは「令和4〜8年度の期間限定の助成金」として作られ、公式資料では「令和8年度末(2027年3月31日)までの時限措置」とされています。

ただし、年度末をまたぐ研修の扱いや、令和9年度以降に同じような制度が続くかどうかは、2026年10月20日時点の公式資料では確認できませんでした。 計画届は研修開始の1か月前までに出す必要があるので、今年度中に使いたい場合は早めに管轄の労働局へ相談してください。

2. 外部研修は、研修会社にも条件があります

外部のスクールや研修会社を使う場合、主に次の条件があります。

申し込む前に、研修会社に「この助成金の対象講座として承諾書を出せるか」を確認しておくと安心です。

3. eラーニングにも給料の支払いが必要です

eラーニングや通信制でも、助成の対象になる研修は業務として受けるものなので、受講中も賃金を払う必要があります。所定労働時間外や休日に受けさせた場合は、割増賃金も必要です。

4. 不正受給のペナルティは重い

研修会社からキャッシュバックや「アンケート協力金」「営業協力金」を受け取ると、会社が研修費を全額負担したことにならず、経費助成の対象外になります。「実質無料」「助成金で利益が出る」という勧誘は、厚労省が注意を呼びかけている典型例です。

5. 申請代行は社労士の仕事です

報酬を得て申請書の作成や提出代行ができるのは、社会保険労務士だけです。研修会社が「申請は無料で代行します」とうたう場合も、問題になることがあると厚労省は注意しています。

関連するコース

人材開発支援助成金には、ほかにもAI研修で検討できるコースがあります。

コース 中小企業の経費助成 賃金助成(1時間) メモ
事業展開等リスキリング支援コース 75% 1,000円 この記事の中心。令和8年度末までの時限措置
人材育成支援コース(人材育成訓練) 45%(賃金要件等を満たせば60%) 800円(同1,000円) 職務に関連する一般的な研修。非正規雇用の場合は70%(同85%)
人への投資促進コース(高度デジタル人材訓練など) 75% 1,000円 令和8年度末までの時限措置。対象となる研修の条件が別に決まっている

どのコースが合うかは研修の内容で変わるので、計画届を出す前に労働局で確認してください。

申請前のチェックリスト

研修そのものをどう選ぶかは、生成AIスクールの比較や料金相場の記事も参考にしてください。社員がまず何から使えばいいか迷っている段階なら、ChatGPTの仕事での使い方を社内で共有するところから始めるのも一つの方法です。

よくある質問

従業員がいない個人事業主でも、AIリスキリングの助成金は使えますか?

使えません。人材開発支援助成金は、雇用保険に入っている従業員に会社が研修を受けさせたときの制度です。被保険者がいない事業所は対象外です。個人で受講する場合の制度は、生成AIスクールの補助金・給付金の記事で整理しています。

eラーニングのAI講座でも助成されますか?

標準学習時間が10時間以上(または標準学習期間が1か月以上)などの条件を満たせば、経費助成の対象になります。ただし賃金助成は出ず、経費助成の上限は中小企業で15万円です。令和8年8月3日以降に出した計画届では、同じ従業員のeラーニングは1年度に1回までです。

研修を始めてから申請しても間に合いますか?

間に合いません。計画届は研修開始日の6か月前から1か月前までに労働局へ出す必要があります。

このコースはいつまで使えますか?

公式資料では「令和8年度末(2027年3月31日)までの時限措置」とされています。年度末をまたぐ研修の扱いや来年度以降の制度は、2026年10月20日時点の公式資料では確認できませんでした。管轄の労働局に確認してください。

社長や役員がAI研修を受けた場合も対象になりますか?

対象は雇用保険の被保険者です。社長本人など、雇用保険に入っていない人は対象になりません。役員でも雇用保険に入っているかどうかで変わるため、個別に労働局へ確認してください。

出典(2026年10月20日確認)

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